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2017年03月10日

奇跡の昇格を支えたダルムシュタットファンの死から1年

SV Darmstadt 98
SVダルムシュタット
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あの日からまもなくして、ちょうど1年の月日がながれようとしている…。

2016年3月9日。この日SVダルムシュタットは、大きな悲しみに包まれた。12年間に及ぶ闘病生活の末、26歳のヨナタン・ハイメス(ニックネーム:ジョニー)がこの世を去ったのである。当時のダーク・シュスター監督は「ジョニーはこれからも、我々にとって大切な存在であり続ける」と言葉を贈っている。

テニスが大好きだったジョニー。実は世界ランクトップ10入りも果たしたことのあるアンドレア・ペトコヴィッチとは、その時からの友人であり、さらにペトコヴィッチの父親からコーチを受けた仲でもあった。

だが14歳の時、頭部に腫瘍があることが判明。手術から2週間の昏睡状態が続いた後、懸命に回復を目指すもさらにその数年後、今度は背中に再発していることが明らかに。

そんなとき、病院にいたジョニーへ友人から1つのSNSが届いた。

「お前のガンは4−6、4−5とし、15−40でマッチポイントを迎えているところだ。戦え!まだ試合は終わっていない」

そこからジョニーは、再びテニスができるところまで回復。その時に書いた著書「COMEBACK」のイベントでは、ペトコヴィッチが寄稿した前書きをジョニーが朗読し、涙ぐむペトコヴィッチを慰めるジョニーの姿が見られている。

しかし運命はあまりに過酷だった。間も無くして、再びジョニーの頭部に再発していたことが判明。

それでもジョニーは「2回戦うのも、3回戦うのも同じことだよ」と、あくまで前向きな姿勢を失うことなく、しかも闘病生活を送りながら、同じくガンと戦う子供達を勇気付けてまわったのである。

さらにジョニーは「戦え!まだ負けていない」と書かれたリストバンドを作成。その売り上げ15万ユーロは全て治療をサポートする団体へと寄付し、それは地元SVダルムシュタット98にも伝わった。選手たちは今もなおそれを身につけてシーズンへと臨んでおり、マルコ・ザイラーに至ってはそのメッセージをタトゥーに刻んでいる。

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その当時のダルムシュタットは、4部5部を行き来していたクラブで、ようやく3部昇格を果たすも前年度18位と下馬評は低かった。しかしこのリストバンドを付けて臨んだ選手たちはこれを覆して3位でフィニッシュ。20年ぶりとなる2部昇格をかけ、ビーレフェルトとの入れ替え戦へとコマを進めてみせる。

だがホームで迎えた初戦、ダルムシュタットはアウェイゴール3点を許して完敗(1−3)。いきなり困難を極める状況へと陥いることに。そんなビーレフェルトでの最終決戦を前に、シュスター監督は選手たちに対して、以下のような言葉で檄を飛ばした。

「心に弱さが生まれたとき、そのリストバンドに書かれている言葉を見ろ。ジョニーは闘病生活の中でこれをやっている。我々だって、サッカーで同じことをやってみせるんだ」

そして奮起したダルムシュタットは、3−1と盛り返す執念をみせ、試合は延長戦へと突入。だが延長110分、ホームのビーレフェルトが得点し、そのままロスタイムへと突入。もはや万事休すかと思われた。

しかし延長戦のロスタイム2分、ダ・コスタが左足で見事ゴールを決める。遂にこのシリーズではじめて、ダルムシュタットがビーレフェルトからリードを奪った瞬間でもあった。だが試合はまだ終わらない。ラストプレーで、ビーレフェルトのファイクがヘディングを放つ・・・、しかしそれはポストにはじかれ試合終了。ダルムシュタットが劇的な形で、2部昇格を果たしたのである。

だがダルムシュタットの奇跡はそれだけにとどまらない。

2部昇格組として臨んだ昨シーズンでいきなり2位という好成績を収め、およそ40年ぶりとなるブンデス1部昇格を達成。そして決して忘れることのできない、あのときの夏が訪れた。

1部昇格を祝うイベントで、選手たちはジョニーを壇上へ招くと、ダルムシュタットのファンたちは一斉に「ジョニーがいなれければ、俺たちはここにはいないんだ」と大合唱を贈ったのだ。

去年、ペトコヴィッチと作った慈善団体「DU MUSST KAEMPFEN – es ist noch nicht verloren」(戦え!まだ終わってない)のホームページで、ジョニーは自身の人生についてこのように綴っている。

「„DIE KRANKHEIT IST WIE EIN KINOFILM, UND ICH HABE DIE HAUPTROLLE“」

(病気は1つの映画のようなものさ。そしてその主役は僕だよ)

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昨年3月、ジョニーが他界した最初のホーム戦では、観客席にはジョニーのコレオグラフィが飾られ、そこには「君が恋しい。でも君の存在はこのまま残り続ける。俺たちは戦い続けるよ」とのメッセージが添えられた。

さらにハイメスがこの世を去って以来、初めて迎えたシーズンでは、ハイメスの父マルティンさんのアイデアであるハイメスの名前がスタジアム名に刻むことを、スタジアム命名権を持つメルク社が採用。今シーズンは『メルク・シュタディオン』ではなく、『ヨナタン・ハイメス・シュタディオン』として、ダルムシュタットは戦っている。

そしてユニフォーム・スポンサーのソフトウェアAGも、ハイメスの命日の試合で、”DUMUSSTKÄMPFEN”の文字を、ユニフォームのロゴとして採用。売り上げの一部は、癌と戦う子供達をサポートするハイメスの慈善団体へと寄付されるとのこと。

フリンクス監督は「日々、ジョニーのことで話題はもちきりだよ」とコメント、最下位に沈むダルムシュタットとしては、これを勢いにして盛り返していきたいところだ。

なお対戦相手マインツも、もしも得点を決めた際には、1ゴールにつき1得点をジョニーの慈善団体に寄付することを公言した。

キックホフは土曜日、日本時間23時30分からだ。

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