ドイツ最大のサッカー専門誌 - kicker日本語版

2018年07月23日

エジルからの言葉〜第3章:連盟会長を辛辣に批判、そして代表引退へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


ワールドカップ敗退からこれまで沈黙を保ち続けて来たメスト・エジルが、自身のSNSへと「考えをファンたちと共有する」ため3つの投稿にわけてメッセージを投稿。その第3部では、代表として92試合に出場してきた同選手が、ドイツ代表からの引退を表明した。

「ただもっともフラストレーションが溜まったこと。それはここ数ヶ月間で受けた、誤った扱われ方だ。特にグリンデル会長。エルドガン大統領との写真撮影後、まずレーヴ代表監督から言われたことは、休暇を短めに切り上げてベルリンに向かうこと。そこで共同声明を発表して、この問題に終止符を打つように、しっかりとした説明を行うようにということだった。そしてグリンデル会長へ僕自身のルーツや、写真撮影に応じた理由について説明を試みた際、彼はむしろ自身の政治的見解の方に興味をもち、僕の意見を軽視していた。まるで踏ん反り返っているような態度だったね。ただそれでも、何よりも重要なことはサッカー、ワールドカップに集中することだということで合意はした。だから合宿中に行われたメディアデーには参加しなかったんだ。ジャーナリストたちからは、サッカーではなく政治に関する議論で口撃してくるとわかっていたからね。そもそもサウジアラビアとのテストマッチで、オリヴァー・ビアホフ氏がこのことについて説明を行なったことで問題に終止符が打たれていたはずなんだけど。

そのころドイツの大統領と会ったんだ。グリンデル会長とは異なり、大統領はプロフェッショナルだったよ。彼は僕や家族のルーツや、僕の考えなどについて、しっかりと興味をもってくれた。あのときに出席していたのは大統領とイルカイと、僕の3人だけ。政治的な考えを押し付けるグリンデル会長は、おそらくそれで参加させてもらえなかったのだろう。大統領と合意したことは、共同で声明を出すということ。目的は前向きに、サッカーへと集中していくために。でもグリンデル会長は、自身が先にプレスリリースを出せなかったことについて苛立ちを見せていた。大統領の広報が先に発表したことについてね。

ワールドカップ敗退後、グリンデル会長には大会前での判断についての責任追及から、プレッシャーにさらされることになってしまった。僕は、それは正しいことだと思うよ。最近グリンデル会長は、僕がもう1度説明をしなくてはいけないという旨を発表していたね。チームの不甲斐ない成績を僕のせいにして。しかもそれはベルリンで全て終わったはずだったことだというのに。これから話すことは、グリンデル会長のためではなく、あくまで自分が示したいから書くことだ。もう彼の無能さによる、スケープゴートになるのはこりごりだ。エルドガン大統領との写真の件のあとで、彼が僕を代表から外したがっていたことは知っている。考えも相談もなく、彼はツイッターでそれを公開した。でもレーヴ監督やビアホフ氏が僕をサポートしてくれた。グリンデル会長や彼の取り巻きたちの見方は、勝つ時は僕はドイツ人で、負ける時は僕が移民だということ。僕はちゃんとドイツで税金を払って、学校の建設などにも貢献して、2014年にワールドカップで優勝を果たしたというのに、それでも僕はまだ受け入れられていない。異なる人間として扱われている。2010年には僕はドイツ・インテグレーションの成功例としてのバンビ賞を受賞した。2014年には(国内最高のスポーツ賞となる)シルバーローレルリーフ賞を、2015年にはドイツサッカー大使にも任命された。それでも僕はドイツ人ではないというのかい?それ以上に何があるというのか。友人であるポドルスキやクローゼは、ドイツ・ポーランド人として扱われていない。なのになぜトルコ系ドイツ人と言うんだい?それはトルコだから?イスラム教徒だから?それがポイントなんだろう。トルコ系ドイツ人と言われると、1つの国以上にルーツを持つ人を差別していると感じる。ドイツ生まれで、ドイツで育ったというのに、なぜ僕がドイツ人であるということが受け入れてもらえないのか。

グリンデル会長の考えというのは、他のところでみ見て取ることができる。ベルント・ホルツハウアー(ドイツの政治家)は、エルドガンとの写真と、僕のルーツから、「ゴート・ファッカー(イスラム教徒をバカにする言い方)」と言っていたし、さらにヴェルナー・シュテアー(ドイツ座の代表)は、アナトリアへ帰れ」と発言している。アナトリアとは、多くのトルコの移民者の出身地だ。前述の通り、僕のルーツを批判し愚弄することはあまりにひどいことだと思う。差別を政治のプロパガンダとして利用するような、敬意に欠ける人物たちは、今すぐにそれをやめるべきだ。そういった人たちはエルドガン大統領との写真を、人種差別の考えを表現する機会として利用している。それは社会にとってとても危険なことだ。スウェーデン戦後、ドイツのファンから随分とひどいメッセージが寄せられた。さっきの人たちと変わらないようなものだった。ヘイトメールも電話も、SNSへのメッセージも、僕や家族は随分ともらった。それは昔のドイツを想い起すようだね。新しい文化に閉鎖的で、今の僕たちからみて決して誇りに思えない時代。ちゃんと誇りに思える、オープンな社会を楽しんでいるドイツ人のみなさんとは、同じ意見だと思っているよ。

ラインハルト・グリンデル会長へ:僕はあなた行動に失望しているが、しかし決して驚いているわけではありません。2004年にあなたが国会議員だった頃、あなたは「多国籍文化というものは夢物語であり虚像だ」と言っていましたね。そしてあなたが、二重国籍の法案へ反対票を投じた。贈賄への処罰の法案に反対票を投じたあなたが。さらにはあなたは、イスラム文化はドイツの多くの町に入りすぎているとも言っていましたね。僕は決して許さないし、忘れることはない。

ドイツサッカー連盟から受けた扱いでは、もう僕はドイツ代表のユニフォームをきることはできない、望まれていないと感じながら。2009年の国際マッチデビューからのこれまでの道のりはまるで忘れ去られたかのようだ。人種差別を心にもつ人間は、世界の中でも最も大きいサッカー連盟で仕事をすべきではない。そこにはたくさんの二つの国に関係している人たちがいる。そんな姿勢では決して選手たちを代表することなんてできない。

僕の気持ちはとても重い。最近起きたことについて熟考を重ねてきた末に、僕はドイツ代表の一員としてこれ以上国際舞台には立たない決断を下した。人種差別と軽蔑の中でプレーすることはできない。僕はこれまで、ドイツ代表のユニフォームに誇りと感激を感じながらプレーしてきた。でも今は違う。この判断はとても難しいものだよ。だってチームメイトやコーチスタッフ、そしてドイツのいい人たちのために僕は全力を尽くしてきたのだから。でもドイツサッカー連盟のお偉いさんたちから、あんな扱われ方をされるなら、僕のトルコのルーツを軽蔑し、自分のエゴで僕を政治的に利用するなんて。もう十分だ。僕はそのためにサッカーしているわけでもないし、こんなことをすんなりと受け入れたりしない。人種差別は、決してあってはならないことなんだ。」

【特集】エルドガン大統領表敬問題のニュース記事まとめ


  • ブンデスリーガ・各チーム情報