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2016年11月12日

【コラム】協調とエゴの狭間で…涙から4カ月、浅野が語る悔しさと手応え「まだまだ成長できる」

VfB Stuttgart
VfBシュツットガルト
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 協調かエゴか――。ストライカーはその葛藤の繰り返しなのかもしれない。

キリンチャレンジカップ2016のオマーン代表戦、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)はしっかりと爪痕を残した。途中出場した2分後にPKを奪取。キッカーをMF清武弘嗣(セビージャ)に譲りはしたが、前日会見で「我々もFKやPKを誘いに行かなければいけない」と話していたヴァイッド・ハリルホジッチ監督の求める“ミッション”をクリアしたと言えるだろう。

しかし、浅野は「悔しいシーンが1つあった」と振り返る。それは自分が獲得したPKを他の選手に決められたことではない。彼の脳裏には、「後悔している」と唇を噛んだ4カ月前のある場面が浮かんでいた。

6月7日のキリンカップ決勝・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表戦。1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイム、清武のパスにフリーで抜け出した浅野は、シュートではなく“パス”を選択した。結果として同点弾は生まれず、試合後は人目をはばからずに悔し涙を流した。

今回のオマーン戦でも似たようなシーンがあった。72分、右サイドでMF小林祐希(ヘーレンフェーン)から鋭い縦パスを受けた浅野は一度は前を向いたが、エリア内中央のFW久保裕也(ヤング・ボーイズ)に折り返す。

「シュートのところで久保(裕也)くんが見えて、パスを選択したところは一つの課題。悔しいですね。つなぐのか、もしくはシュートなのか。結果論ですけど、まだ成長できる部分だと思います」

シュートより“パス”。浅野は、チームに得点をもたらすために、一瞬の判断でより確率の高いほうを選んだ。残念ながら、ボスニア戦同様に得点には至らなかったが、決して同じミスではない。「あそこで、まず(久保が)見えている。そういう余裕は生まれてきていると思います。あとはいい判断をして、結果につなげる。そこがまだまだ成長しないといけない」。消極的に“パス”を選んだ4カ月前の浅野とは違う。

チームメイトもまた、確実に彼の特長を理解し、生かし始めている。10月11日のオーストラリア代表戦に続いて、この試合でも清武から相手DFの背後を狙うロングパスが入っていた。「清武さんがボールを持ったら、出てくるのは分かっています。チームも自分の特長を分かってきてくれていて、タイミングは少しずつ合ってきていると思います」と浅野自身も変化を実感しているようだ。

だからこそ、若さゆえの暴走があってもいいと思う。浅野はオマーン戦前に、日本代表は「結果を残す選手が生き残れる場」と表現していた。その結果を出すためには、時にFWとしてのエゴを貫き通すことも必要だ。「もっともっと、まだまだ成長できる」。“成長”という言葉を繰り返す浅野にとって、パスを選択しない“強引さ”がストライカーとしてひと皮剥けるヒントになるだろう。

取材・文=高尾太恵子

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