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2017年01月26日

【インタビュー】浅野拓磨「前半戦の出来は40点」 ドイツでも変わらぬストライカーとしてのこだわり

VfB Stuttgart
VfBシュツットガルト
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インタビューが行われた昨年末、帰国直後の浅野拓磨には取材が殺到していた。それでも疲れた表情を一切見せず、むしろ笑顔を浮かべながら投げかけた質問に自分の言葉で答えていく。その謙虚な物言いはいつもと変わらない。ただ、言葉の端々ににじむストライカーとしてのプライドが、いつもよりも強く感じられた。

海外挑戦1年目の22歳は、想像以上にすんなりとチームに溶け込んだ。シーズン開幕からわずか3カ月足らずで指揮官の交代劇に直面したが、ハネス・ヴォルフ新監督の下で主に左サイドのレギュラーに定着。献身的なハードワークでチームに貢献し、ほとんどのチャンスに絡んでいる。シュトゥットガルトで上々なスタートを切ったと言ってもいいだろう。しかし、浅野に満足している様子は微塵もない。

ストライカーがゴールにこだわるのは当然のことだ。早く結果を出さなければ――。そんな焦りや葛藤を抱えながら戦った前半戦。浅野は「納得できていない」と言い切る。ドイツで戦う若武者の向ける視線はさらに先にあった。

■ニュルンベルク戦で自信がついた

――シュトゥットガルトでの前半戦はリーグ戦13試合に出場し、2ゴール4アシストという記録です。率直な感想を聞かせてください。
100点満点中、40点くらいですかね。それくらい納得できていないです。

――半分にも満たないと?
はい。目に見える結果を出せていないことが、納得できていない一番の理由です。その目に見える結果というのは、やっぱりゴール。もっと貪欲に求めていかないといけない部分ですし、今はまだゴールという結果でチームの勝利に貢献できていないと思っています。

――そのゴールで言うと、カールスルーエ戦(2016年10月30日開催の第11節)で移籍後初ゴールを決めましたが、試合後には「納得のいくゴールではなかった」と振り返っていました。
『納得のいかないゴール』=『ダメなゴール』というわけではないんですよ。僕の『納得のいくゴール』は特長を生かしたゴール。スピードで抜け出して決められてこそ、『自分のゴール』だと感じられるんです。初めて点を取ったうれしさはすごくあったんですけど、自分が求めていた形と全然違っていて。あの試合は『納得のいくゴール』を決められるチャンスがたくさんあったので、「あそこで決めないといけなかった」という悔しさのほうが大きくて、そういう言葉になりました。

――では、ニュルンベルク戦(2016年11月28日開催の第14節)の2点目は、『納得のいくゴール』に近かったのでは?(編集部注:カルロス・マネのボールに抜け出し、右足でゴール)
そうですね。あれは自分の特長が生きたゴールだったと思いますし、1点目のアシストもまさに自分らしいプレーでした。ただ、あの試合も決められるチャンスが他にもありましたからね。外しまくって、やっと取れた1点でした(苦笑)。でも自分の中では結構手応えを感じたんです。1ゴール1アシストしかしていませんし、もっと点を取れたはずですけど、理想とする場面を作り出せました。90分間走り切れたことも良かった。あの試合はかなり自信につながりました。

――個人的には、ニュルンベルク戦が1つのターニングポイントになったという印象があります。そこから3試合連続でアシストも決めましたし、何かつかんだものがあったのかなと。
あの試合はボールを持った時の仕掛け方もそうですし、タイミングや間合いが完全に自分のテンポでできていたので、相手との駆け引きでも負ける場面が少なかった。完璧とまではいかないですけど、それに近い試合ができて何かをつかめた気がします。自信がついたのは間違いないです。

――あの試合以降、(カルロス)マネ選手からのボールを受けることが格段に増えましたよね。
そうですね。カルロスは結構顔が上がる選手なので、彼がボールを持った時は信頼して走っています。タイミングがバッチリなんですよ。僕が走ればボールが出てくると信じていますし、カルロスも探してくれているので、そこの関係性は良くなってきていると感じています。だからこそ、逆のパターンを増やしていきたい。カルロスも動き出しを得意としている選手なので、あとは僕がボールを持った時に顔を上げる回数や出すパスの精度を上げていくことができれば、互いが互いを生かし合えるはず。ボールを受けてばかりではなくて、逆のパターンができるようになったら、もっといいチームになれると感じています。

浅野拓磨

――それこそ序盤戦は「自分の特長を生かそう」、「アピールしてやろう」という思いがどうしても強くなって、試合に絡んでいる時間帯が少ないように感じました。ご自身では、どう捉えていましたか?
正直、そこは自分でも感じていた部分です。試合の勝ち負けも大事なんですけど、ドイツに行った当初はチームの勝利よりも自分のプレーを優先してしまっていて……。試合に負けた悔しさは感じるんですけど、それも実は自分のプレーができなかったという悔しさだったりして。勝った時も、自分が点を決められなかった悔しさがあるので、そんなに喜びも大きくなかったり……。「直さないといけない」と思っていても、そう意識することがダメなんじゃないかと思ったりもしました。いつも自分の素直な気持ちを大事にしたいので、葛藤した時期でしたね。「まずはチームの勝利」と考えるようになったのは、数試合経験してからです。それは多分、勝った時のサポーターやチームの空気が好きになっていったからなんだと思います。僕の中にあった「自分も勝ちたい、負けたくない」という気持ちが大きくなってきて、そこからは自分のプレーではなく、「チームのために何ができるか」を考え始めました。ボールを持った時だけではなく、スプリント回数を増やしたり、守備でも走ったり。その気持ちが前面に表れた試合が、あのニュルンベルク戦だったと思います。

――最後はバテていましたけどね(笑)。
バテていましたけど、楽しかったですね。めちゃくちゃきつかったんですけど(笑)。

――あの日は気温が低かったので、いつもよりも体力的にきつかったのでは?
そうなんですよ。寒くて、肺が苦しかった。前半10分で口の中が血の味でした(苦笑)。疲れると、たまに口の中が鉄の味になるんですよ。だから最初は「今日走れないかも……」と思っていたんですけど、徐々に体が動くようになってきて、何よりも勝ちたいという気持ちで走り切りましたね。おそらく、走行距離もスプリント回数も今までで1番多かったと思います。

■正直、真ん中で勝負してみたい

――ここまでシュート数は22本(第17節終了時点)。この数字をどう見ますか?
打ってますね(笑)。チャンスはチームで1、2番目くらいに作っていると思います。だからこそ、高めていかなければいけないところははっきりしていますね。

――つまり、フィニッシュの精度?
そうです。決定機が1試合に1本はあるので、そこは明らかに課題です。そう簡単に決定機は作れるものではないんですけど、僕は毎試合あるので(苦笑)。そこを確実に決められる力をつけたいです。まあ、今までもずっと言ってきていますけど(笑)。でも、僕は永遠に言い続けるんだろうなあ……と。

――ストライカーとしては永遠の課題かもしれませんね。その精度を高めるために、ドイツで改めて取り組んだトレーニングはありますか?
日本にいる時から練習が終わった後にシュート練習はしていました。自分でも練習から決定率が低いと思っているんですよね(苦笑)。だから、自主練で繰り返して、繰り返して、少しずつでもレベルアップしていくしかない。いきなりうまくなるものではないですから。最もレベルアップできるのは実戦ですけど、練習から精度にはこだわってやっています。

浅野拓磨
――自主練の内容を具体的に教えていただけますか?
外国人選手は、練習が終わるとすぐに帰ってしまう選手が多いんですよ。ゴールキーパーもなかなか残ってくれないので、1人で黙々と無人のゴールにシュートを打っています。僕は自分のポジションに合わせて練習することが多いですね。サンフレッチェ広島の時は主に1トップを務めていたので、試合中最も多いシチュエーションでシュートを打っていました。今は左サイドに入ることが多いので、そこから生まれるようなシーンを自分で作り出してシュートまで持って行く練習をしています。例えば、右足で巻きのシュートを蹴ったり、縦に抜けた後の角度がないところから左足で狙ってみたり。実戦を意識しながら自主練しています。

――なるほど。ただ、先ほどおっしゃっていた自分の特長を生かしたゴールを決めるためには、パスの出し手が必要不可欠です。浅野選手“専用”パスをもらうために工夫していることはありますか?
裏へ抜け出すためには相手との駆け引きで勝つことが大前提なので、工夫というよりはそこの駆け引きを意識しています。抜け出したとしてもパスが出てこないことのほうが多いですけど、その一瞬のためだけに全神経を使って、集中力を切らさずに常に狙う。もし、ポジションが真ん中だったら自分の動く範囲が広くなるので、相手との駆け引きがしやすくなって、ボールを受ける回数はもっと増えるとは思うんですけどね。今やっているサイドでも、うまく相手と駆け引きをしてパスを引き出すことはできると思うので、とにかく集中力を切らさずに狙っています。ボールを持ったらまずは両ワイドを見る。これがチームのコンセプトとしてあるので、自分にボールが出てこなくても、どれだけきつくても、走り抜きます。まあ、オフサイドになることもあるんですけどね(苦笑)。

――ドイツはフィジカルが強い選手が多いと思います。駆け引きにおいて、日本とは違う点や戸惑った点はありましたか?
最初に感じたのは、ボールを持った時の“寄せの速さ”です。すごく速いんですけど、加えて球際の強さもある。ガッシャンって足ごと持って行かれるような感覚です。それで僕も初めのころはボールを失う回数が非常に多かったんですけど、相手との駆け引きを経験するうちに、まずは相手に触れられないようにいつでも仕掛けられる準備をすることと、(ボールを)失わないことを強く意識し始めました。

――ボールの受け所や置き所も変わった?
そうですね。グラウンドもでこぼこだったりするので、トラップ1つでもすごく神経を使います。少しでもミスをすると相手に寄せられて、ガッシャンと行かれますから。むずかしい部分ですけど、慣れていかないといけない。それに寄せが速い分、自分のスピードを生かすことができれば、相手を剥がせる場面が増えると僕は思っています。

――やはり駆け引きが重要になってくる。
はい。相手がゴツかったり、強かったり、速かったりしますけど、自分の特長をしっかりと生かせられれば、その差を感じることは少ないですね。

――浅野選手が勝負したい1トップには、(シモン)テローデ選手という昨シーズンのブンデスリーガ2部・得点王がいて、今シーズンもすでに11得点を挙げています(第17節終了時点)。
単純にあの得点力はすごいですよね。身長も技術もあって、それを生かしたプレーも多いんですけど、大きさやうまさ、速さを使わないプレーでも点が取れる。ポジショニングや嗅覚は凄まじいものを持っていると思います。ただ正直、僕も真ん中で勝負してみたい。彼とは全くタイプが違いますけど、裏に飛び出す回数は自信があります。まあ、僕が1トップに入ったら今とは全然違うチームになってしまいますけどね(笑)。彼のいいところを盗みながら、自分のいいところはさらに自信を持って出していきたいです。

■アーセナルに戻るために、ここでしっかりと結果を残す

――少し話は変わりますが、(ケヴィン)グロスクロイツに気づかなかったそうですね。
気づかなかったというか、同じチームにいることを知らなかったんですよ。めっちゃ喋り掛けてくるなあ、とは思っていたんですけど(笑)。香川(真司)さんとも仲が良かったみたいで、「カガワと一緒にやっていた」と言うんで、「え、どこで? どこのチームで??」と聞いたくらいでした(苦笑)。

浅野拓磨
――本人にですか?(笑)
はい。「なんか名前は聞いたことある人やなあ」と思って、ハジくん(細貝萌)に聞いたら、ドルトムントで優勝しているし、ワールドカップも優勝しているし……化け物でしたね(笑)。実はアーセナルに行った時も、(ペトル)チェフに挨拶を2回してしまって。僕、「ナイス トゥ ミーチュー」って2回言いましたもん(笑)。気付いた時はさすがに「うわっ、やばいな」と思いましたよ。でも、あのヘッドギアをしていなかったら、多分みんな分からないですよ。

――確かに、あのヘッドギアがトレードマークになっているかもしれないですね。
そうですよ! さすがにアーセナルには見たことある選手がたくさんいました。

――アーセナルに早く戻りたいという気持ちは?(編集部注:2016年8月、アーセナルに完全移籍するも労働許可証が取得できなかったため、レンタルでシュトゥットガルトへ加入)
戻りたいですね。多分、戻ってもまたでっかい壁にぶち当たるとは思いますけど、そのでっかい壁にぶち当たる経験も楽しみの1つですし、アーセナルの一員としてピッチに立てたら気持ちいいと思う。そのためにも、今いるチームで早く結果を残さないといけないですね。

――では、最後に改めて、2017年の目標を聞かせてください。
まずはチームでしっかりと結果を残すこと。2016年は納得がいかなかったので、1つでも多くのゴールを取って、チームの勝利に貢献したいです。僕が1番最初にしなければいけないことは、シュトゥットガルトを1部に上げることだと思っています。それが、A代表やアーセナル復帰にもつながると思うので、まずは2部で優勝してチームを1部に昇格させる。それが1番大事な僕の目標です。

きんg

 


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