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2020年08月31日

名将ハインケス氏から、フリック監督へ独最優秀監督賞への祝福

FC Bayern München
バイエルン・ミュンヘン
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執筆:ユップ・ハインケス

 2019年12月はじめに、私はkickerにて「ハンジ・フリック監督のための嘆願書」を執筆した。彼は一時代を作れる人物であると、それは数十年来フリック監督の内面性も知るからこそ、本来はこのような事は決してしないのだが、敢えてそのような提言を行った。彼は約40年前に選手として私の指導を受けており、その後も幾度となく個人的な話し合いの場や、電話でのやりとりを繰り返してきた。ドイツ代表SD時代には、指導者育成講座の講師として招いてもらったし、彼との再会は常に楽しいものだったよ。

 ハンジは個人的な成長の過程において、今日の監督に求められる数多くの重要なステップを踏んできた。アマチュアでも代表チームでもアシスタントやスポーツディレクターを務めており、私がバイエルンの監督を務めていたころに、レーヴ監督のアシスタントとしての評判や選手との相互の信頼関係など、バイエルンの選手から何度も耳にしていた。彼らとのコミュニケーションをはかっていくことで、ピッチで素晴らしいパフォーマンスを発揮させ、そして世界の頂点に立つことになったんだ。

 その一方で彼自身もまた、我々と同様に失望ややりきれない経験も味わっている。そこから多くのことを学んできた。これらの経験の全てが、彼に天性の威厳を持たせ、冷静で決して臆することなく、主権的で決して気取ることのないカリスマ性を持った人格へと成熟させていったのである。

 こうしてハンジ・フリック氏は昨秋、激動の中で選手たちやバイエルンのクラブ全体に落ち着きをもたらすことができた。その共感力とコミュニケーション能力により、彼はそのステータスを構築していくことになる。それは決して役職名によるのではなく、彼のその共感的かつ毅然とした態度によるものだ。彼は監督として君臨するのではなくチームプレイヤーであり、ガーランド氏やブロイヒ氏らを通じて、私の耳にもいかに彼が仲間たちを巻き込んでいきながら、個別に行動できるよう自由を与えているかということが入っている。
 
 また彼の選手として、そしてバックアップとしての経験から、個人的な会話を保ち続けるということに表れている。例えばコウチーニョに対する扱いだ。彼はリスボンで行われたCL決勝トーナメントの舞台で、何度も途中から投入されていた。すでに彼が退団することが明らかとなっているにもかかわらずだ。あれは思いきった采配だと思うし、その人間力に脱帽だ。監督としてこういう時に世間の声に左右されるようなことがあってはならない、自らの目でみて気持ちで判断していくということ。ハンジはそこで、献身的に取り組むコウチーニョの振る舞いを、決して見逃さなかったのだろう。

 監督というものは、選手の心と魂に訴えかけられるものじゃなくてはならない。それは10ヶ月前に私がここに書いたものだ。ハンジは今日のサッカーにおいて、基礎的条件を満たした人物であり、彼が監督としてまさに「宝」であるという私の考えは、わずか10ヶ月後には完璧に実証されることとなった。

 CL決勝でパリSGに勝利した後、私は興奮しすぎてあまりその日の夜は眠ることができなかったよ。ロスタイム5分が表示されたとき、私はすぐに1998年のレアル・マドリードでの決勝戦、ユベントス・トリノ戦を思い出したんだ。あの5分がどれほど長く感じたことか!だがこの日のリビングルームで私が経験したものは、あの時と同じものだった。

 とにかく勝利を願った。それはバイエルンの選手たちが、十分にそれに相応しかったからだ。彼ら全員が、この素晴らしいシーズンの成功に貢献してくれた。そして監督がこの競技面における大きな責任を担っている。ハンジ・フリック氏は、全てを完璧にやってのけ、見事なまでに克服してみせた。彼は立派な欧州三冠指揮官である。そして12月に私が話していた一時代というものが、ここミュンヘンでついに幕を開けた。ハンジはこれからこれを、うまく続けていってくれることだろう。
 


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